神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

ぼくのすむまちは、なぜRPGツクールVXで移植されたのか

ぼくのすむまちVX」第1話が好評になって以来、よく聞かれる意見がありました。

「なぜVXを選んだのか分からない」

要するに、この「ぼくのすむまち」を移植するのは、別のツクールでもいいのではないか、と。

いいえ。VXである必然性があります。今回、ぼくのすむまちが、すんなり移植出来たのは、RPGツクールVXの持つ「RGSSスクリプトが使える2000」という側面を最大限に活かしたからです。

これを説明しましょう。

長い間、移植するツクールを選べず悩んでいた

実は、ぼくのすむまちの移植計画は、ツクールモバイル@RPG終了直後からありました。しかし、ずっと悩んでいました。

RPGツクール2000ではバランスが再現できない

2000を使えばよさそうですが、どうも納得がいかない部分がありました。それは、ゲームバランスを忠実に移植できないことです。

僕はゲームバランスを調整する際、常にツールの特長と制約とを熟知し、それらを活かした調整をすることを心がけています。

オリジナルの『ぼくのすむまち』は『RPGツクール for mobile』で制作されていました。このツールには「装備品を道具として使う」「敵グループの存在」といった他のツクールにはないフィーチャーが取り入れられていました。

しかし、2000では、これらのフィーチャーを再現する事ができません。(やるとすれば、イベントによる自作戦闘など、手間がかかります)。

このため、これらの機能を諦めてバランスを作り直すか……しかし、戦闘バランスも含めて、「ぼくのすむまち」だというこだわりがあったため、そこを、妥協することは出来ませんでした。

RPGツクールXPでは、手間がかかりすぎる

それなら、RPGツクールXPなら大丈夫。RGSSスクリプトがあるため、拡張性がある。

しかし、どうも乗り気になれませんでした。

手間がかかりすぎるのです。

RPGツクールXPの戦闘画面は、2000の物と違い、サイドビューとフロントビューの折衷型のような形です。しかし、どうもイメージと違うのです。

他にも、様々な「ちょっと違うな」という部分があり、全部書き換えるとすると、それだけで時間がかかりすぎる。短編の移植のために、それだけの手間は割けない……そう思って乗り気になれませんでした。

願望「スクリプトでいじれる2000があればいいのに」

そういうわけで昨年の今頃はずっと移植のターゲットをXPにも2000にも絞り込めず、「RGSSでいじれる2000みたいなのがあればいいのに」と、無茶な妄想を、し続けてきました。

しかし、昨年冬、状況は一変します。僕のその無茶な妄想を実現したツクールが出てしまったのです。そう、それがまさにRPGツクールVXです。

RPGツクールVX』を「スクリプトでいじれる2000」として見る

ここで、これまでのツクールの機能をおさらいしてみましょう。
(長文ですし、ツクールXPと2000に詳しい人には釈迦に説法ですので読み飛ばしてください)

2000はイベントコマンドの機能が多く、ある意味、完成形でした。

しかし、戦闘など細かい部分がいじれませんでした。これらをいじれるとしたら究極のツクールになるでしょう。そして、そんな究極のツクールのためには、スクリプトが必要だと、開発陣は考えたのでしょう。RPGツクールXPでは、初めてスクリプトRGSSが導入されました。

RGSSの凄い所は、スクリプトで「一部分」が変更可能なのではなく「ゲーム本体の全部がRGSS、すなわちRuby+ライブラリで記述されており、このためゲーム本体そのものを書き換えることが出来る」という点でした。まさに、恐るべきものでした。

優秀なRPGのソースがそのまま付いていると見ることも出来るわけで、あちらこちらに激震が起こったのを覚えています。僕も魅せられて以来、未だに熱が冷めていません。

RPGツクールXPで導入されたRGSSスクリプトは、プログラム初心者の助けになるように、数多くのコメントがついており、また、流れがシンプルで、拡張性にも富んでおり、出来るだけシンプルに仕上がっています。このため、ゲームプログラムの勉強をするにはうってつけでした。

しかし、ツクラーにはプログラマでない人が多かったわけです。スクリプトをいじって拡張する意思のない人には、「機能が貧弱でスクリプトをいじらないと何も出来ない」という印象を持つ人も一部におり、2000からXPに乗り換えない人が多くいました。そして、この棲み分けはある意味正解だったといえます。

プログラマはXPを使うだろうし、ツクールのイベントコマンドに慣れた人は2000を使う。こういうスタイルでした。

しかし、ここでRPGツクールVXが登場しました。

RPGツクール2000の機能がデフォルトで準備されています。その分、スクリプトの方も複雑になっていますが、プログラマにとって、そしてツクールXP経験者にとって、とてもやりがいのあるものになっています。

まさに「RGSSで変幻自在にいじれる2000」として働いてくれそうです。

VXだからこそ手軽に移植できた

よって、ぼくのすむまちは、VXが「RGSSが使える2000」だからこそ移植がたやすく出来たのです。

また、これは分業体制にも大きく貢献しました。

ブラック・ウルフさんは、RPGツクール2000で作品を発表しており、2000風のイベント関連や演出に慣れています。

一方、僕の方はXPを長い間使い続けてきたため、RGSSに慣れています。

この二人が理想的な分業を出来たのは、VXだからに他ならないわけです。

「VXユーザーの参考になる作品」だが「(一般的なイメージの)VX的な作品」とは違う

というわけですが、「ぼくのすむまち」はツクールモバイル作品の移植、つまり、もとがiアプリのため、とても短く、コンパクトです。

ファミ通.com無料ゲームが紹介してくださったのも、そのコンパクトさ、まとまりのよさゆえでしょう。

しかし、VXやXP作品と言った場合、一般的なイメージは、本格的なボリュームのある作品、といったものであり、それらを求めていた人が、「ぼくのすむまちVX」を知らずにプレーすると、多少がっかりするかもしれませんね。

その意味で、ぼくのすむまちVXは、フリーゲームのプレイヤーより、むしろVXで制作を志す人者向けといえるかもしれませんね。「VXでは、このくらいの短編が気軽に作れるんだぞ」ということがアピールできたと思っています。

XPのころは皆、下ごしらえが大変だったため、必然的に大作が多くなりました。一方VXでは、気軽な短編も作れる。しかも2000に慣れた人にとっても、XPに慣れた人にとっても、やさしい。それが示せたのだと思います。