神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

Every Extend Extraの元ゲームはPCのフリーソフト

8月3日、バンダイナムコゲームスから、Every Extend Extraというゲームが出たが、これは元はPCのフリーソフトで、PSPのゲームなのにPC版の体験版を出すなど、様々な話題になっている。ファミ通クロスレビューを見ても8、7、7、7と、元インディーズゲームとしては破格の評価だった。

普段シューティングゲームを全くやらない僕がこの作品を気にしている理由は、『Every Extend』を、「3分ゲームコンテスト」で入賞した時点から知っているからだ。

3分ゲームコンテストとは

RPGツクールを中心とするフリーソフト界隈の人が個人レベルでやっているコンテスト。応募作品も、RPGツクール作品が多い。「長い作品はなかなか完成できないから、短いのでもいいから完成させて披露しあおう」という風潮がツクールのコミュニティにはあった。このコンテストもそんな流れを汲んで生まれたのだと記憶している。

『Every Extend』は、第2回3分ゲームコンテストでグランプリを獲得している。入賞しても身内で表彰して盛り上がるだけの感じだったが、ルミネスの会社の人に目をつけられ、商品化が決定したと聞いたときには、想定外のことに皆驚いていたようだ。

注:似たような内容の書き込みをSlashdot Japanで見つけたかもしれないが、パクリではなく、僕があれを書いたAnonymous Cowardなのです(汗)。

雑誌で見かけた記事

先週号のファミ通(No.921)の巻頭特集ではキューエンターテインメント(水口哲也の会社)のことが取り上げられており、そこでもEvery Extend Extraのことが触れられていた。

Every Extend Extra』も大学生が作ったPC用のフリーソフトを発掘したものですよね。
水口:そうです。うちの若いディレクターが「作った学生に会いに行ってきます!」って名古屋にすっ飛んでいって、「決めてきました!」って帰ってきまして(笑)。

会社の機動力や身軽さを象徴するエピソードとして取り上げている。

Every Extendをやってみる

きっと、製品化するくらいだから、いいゲームなのだろう。参考にしたいと思い、プレーしてみたが、僕はシューティングの楽しさが分からない人間だ。RPGやパズルのようにじっくり腰をすえてやるゲームが好きな人間だから、このゲームのレビューには向かない。

というわけで、シューティングが得意な友人にレビューを頼んだ。彼はダライアスなどのシューティングゲームが大好きですが、忙しい中プレーしてくれ、予想以上に濃い感想をくれたので掲載させていただきます。

以下、友人の感想です。(注:改行など、文章は若干さすけが直しました。ご了承ください)

ソフトをDLした直後に遊べるようになっている

遊べるようになるまでに(プレイヤーが操作できるようになるまで)時間がかからない。「爽快感がある」以前に「ストレスがない」というのは、非常に重要な事ですから。煩雑な設定なしでソフトを起動させる事ができる、というのは大事な事です。

ストーリーが単純

これって結構大事です。最近のゲームは「斬新なシステム」や「多彩な登場人物」「複雑な人間関係」なんてのをウリにしてるのが大量に存在します。「ゲームをやる前に、ちょっとした小説並みの設定を読まなければならない」というゲームもありますから。このゲームは設定が適当で、設定を読んでなくても問題なく遊べるというのが良いですね。

難易度:とっつきやすく奥が深い

とっつきやすい

敵が移動する軌道は一直線で加速も減速もしないから回避しやすい。アイテムを取らなければ敵は増えない。時間が来れば確実にボスと戦える。ボスもシューティングとしては非常に耐久力が低い。よってクリアするだけなら簡単。

使うボタンは一つだけで、溜め撃ちも連射も無く、操作は非常に簡単なのでシューティングをやった事がない人でも遊べる。自機にパワーアップという概念がないからRPGで言うところの経験値稼ぎに追われる事が無く、『激戦区で死亡、貧弱な装備で再開するも敵の山の前に手も足も出せずに全滅』という事も無い。

このため初心者でも気軽に楽しめるゲームですね、これ。

奥が深い

しかし、ハイスコアを目指し始めると事情が変わります。

画面の全体に配置された数字を見る必要があるから常に大きく目を動かしてなければならない。その全てが、色と大きさが同じ数字で表示されている。多分、視覚を混乱させるための演出でしょうね。

また、効率よくアイテムを回収するには画面の端から中心に向かってアイテムが飛ぶように敵を倒す必要がある。このため、戦闘は画面の端の方に偏ってしまう。しかし画面の端といえば敵の出現地点でもある。アイテムの回収効率を上げるには、即死連発というリスクを背負わなければならない。アイテムを回収していると敵の出現率が上がり、敵の出現率が上がるとアイテムの出現率も上がり・・・そうこうやっていると画面中が敵とアイテムで埋め尽くされて自爆後の復活地点を選ぶのが難しくなり・・・狙おうと思えば、いくらでもハイスコアを目指せるんですが難易度は際限なく難しくなります。

このように、遊ぶ人の技量に合わせて難易度が極端に変化する、という独特なシステムを持った作品ですね。

遊び方によってゲームの難易度が変わる、という事自体は珍しくないんですがこの作品のように「誰でもクリアできる」と「異常に難しい」が両立してる、というゲームは珍しいです。

以下は、僕の質問に対する回答という形で答えてもらった

Q.何度も遊んでみたいか

自分はゲームを一人で遊ぶ上に「ハイスコア」という概念を持たない人間なので、このゲームを繰り返し遊ぼうとは思いません。そういう人間に対する訴求力が弱い、というのがこのゲームの問題点ですね。

Q.シューティング層の開拓になるか

なると思います。『シューティング未経験の人間でも簡単に遊べる』というのは非常に良い事です。もしかしたら、雨後のタケノコのようにパクリゲーが大量に出てくるかもしれませんねw

でも、こういう作品は第1作目が最高傑作で、2作目以降は単なる拡張パックに堕ちている、と言う事が少なからずありますからそんな感じになると予想します。

Q.他のゲームを放り出して遊ぶ魅力があるか

そこまでの魅力は感じません。ハイスコア狙いのゲームという点では、他のゲームとあまり差がありませんから。ある程度ゲームをやった人間としては、沢山あるゲームの一つ、という程度にしか思えません(実は、既に飽きた)。

自分がダライアスとかR-TYPEにハマっていたのはあれらの作品を『ゲーム』としてではなく『自分で動かせるアニメ』と言う風に捉えていた部分がありますから。

結論

最近のゲームは「プレーヤーはゲームというものをやった事がある」という前提で作られているとしか思えない物ばかりなのでこの作品のような、初心者にもやさしいゲームというのは貴重です。

シューティングゲーム好きの本格的な感想を読んで、シューティングゲーム好きの方はプレーしたくなったのではないだろうか。

製品の体験版が重たくてプレーできなかった人は、Every Extendの方をプレーしてもいいかもしれない。そして気に入ったら、ぜひ製品版を購入してあげてくださいね。

RPGツクールを扱う人間が学ぶ事

僕がレビューをお願いした彼はこんなことも言っていた。「シューティングというジャンルは先細りだった。ルールが難しくなりすぎ、初心者がついていけなくなったからだ。RPGも同じ道を歩もうとしている」と。この意見には賛否両論あるだろうが、少なくとも僕は眼からうろこが落ちる部分があった。

RPG=長時間かけてやるもの』というのは我々の常識ではある。爽快感を演出するためにアクション性を強くするなどの方向に進化してきたが、反射神経のない僕は、それになにか違和感を感じ続けてきた。パズルのように沈思黙考型のもので、なおかつ単純なルールで短時間で出来るものがもっと出てきてもいいのではないか。ローグ系のゲームもそうだが「とっつきやすく、奥が深い」というのは、ゲームデザインの理想だ。

僕は『3分ゲームコンテスト』から製品化された作品が出たことをとりわけ興味深く感じる。長編でじっくり遊べるゲームも大事だが、短時間でささっと遊べるゲームを時代は求めているのかもしれない。しかも何度も繰り返し遊んでもらえるゲームとは……このコンテストの入賞作品を見て、プレーし、反響を見ていると(コメントが見られるのが親切ですね)、直感で理解できそうだ。少なくとも、制作者は創作意欲をかき立てられる。ちょっとした暇が出来て短いゲームをやりたくなった時は、ぜひ訪れてプレーしてみたい。