神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

ダーケストダンジョンMVコラボ開発秘話

今年8月、日本語版ダーケストダンジョンが発売されました。

それに先立ってKADOKAWA様から、本ダーケストダンジョンをベースにした
RPGツクールMVでのコラボゲームの依頼が来ました。
僕がダーケストダンジョンをクリアしているから
それでこの話が来たのだと思います。

詳細はこちらの記事をご覧ください → http://d.hatena.ne.jp/ktakaki/20180802/p1
タイトルは「俺がDarkest Dungeonの世界に転生した件」にしました。

最初に渡されたのは、コラボキャンペーンで配布されたのと同じ、
8人のヒーロー(注:このゲームでは冒険者をヒーローと呼ぶ)の画像、
それもサイドビューバトル用の背景、これだけでした。

担当の方からは「サイドビューバトル素材があるからって、
必ずしも無理に戦闘を入れる必要はない」などご説明してくださいましたが、
せっかくコラボゲームを作る以上、本家を可能な限り再現したいと思うに至りました。
よって戦闘は入れたい、そしてダンジョン探索の要素を入れたい、と強く思っていました。

しかし、RPGツクールMVとダーケストダンジョンのシステムには
大きな隔たりがありました。
全てを再現するのは無理でも、可能な限りやってやろう……
そう思いながら制作しました。
詳細はこれから説明させていただきますが、
なるべく本家の魅力の片鱗、いやそれ以上のものを味わえるように
努力したつもりです。
このエントリは、全くシステムの異なるゲームを、ツクールMVで再現する際の経験談ということになるため、
珍しいシステムのゲームを作りたい人には参考になると思います。

ダンジョン内のマップ表示

本家ではダンジョンを進むとき、「どの方向でも左から右へ動く」
「敵は右半分に現れ、移動とシームレスに切り替わる」
という点が、ツクールMVとの大きな違いですね。
ダンジョン画面の背景がしっかり描かれています。

一方、ツクールMVでは、壁の模様を再現できませんし、
サイドビューのスタイルが、ダーケストダンジョンと逆です。
しかも、アクターのサイドビューアニメーションは、
フィールドのキャラクターとは異なります。
結果、ツクールMVの形式で、右側に仲間、敵は左側に設置することにしました。
つまり僕は、RPGツクールMV同様のシステムを取ることにしたわけです。
本家のダンジョンには、部屋があり、部屋と部屋をつなぐ廊下を作りました。
自動生成ダンジョンを導入し、
ダンジョンに入るたびに形が変わるのは、本家と一緒です。


自動生成ダンジョンの作り方は、
アドベントカレンダーの次の書き込み(12月4日公開)で紹介する予定です。
なお、α版をご覧になったスタッフ様は最初、
「あれ、左から右に移動するんじゃないの?」と言われましたが、
上記の理由があるため、納得してもらいました。

敵が現れた時

前述の通り、本家では通常移動と戦闘が画面変更なくシームレスに始まります。

しかしツクールMVでは、マップ上のキャラとサイドビューバトルのキャラ画像が
異なっているため、シームレスに戦闘に突入、ということも出来ません。

結果、ツクールMVのデフォルト戦闘に、いくつか機能を施した形で落ち着きました。
これでもDDの戦闘の魅力が、かなり再現できたと思っています。

町(Hamlet)における大きな違い

ダーケストダンジョンでは、ダンジョン以外の部分、つまり町並みを
一枚絵のクリッカブルマップで示しています。

一方、ツクールMVのコラボでは、町を、ツクールMVの町と同様に、動き回れるようにしました。

これは、せっかくツクールMVを使うのだから、
一枚絵にするより、MV風の町の中を散策して、情報を集めてもらいたい、
という理由によります。
なお、コラボのツクールMVでは、ダンジョンにいない間は、
酒場や修道院などのストレス発散施設などがありますが、
これらの重要な施設を町の入り口近くに置き、
あまり重要性のない施設は奥に置くことにしました。
例えば、本家には、サナトリウムの他に、
装備やスキルを上げるお店もあり、その他もありますが、
ツクールMVコラボでは、そもそも病気(disease)にならないこと、
そして、主人公(ヒーロー)たちが皆、自分のレベルで最高の装備をしているため、
必要のない施設なのですが、有益な情報を得るために残しています。
このあたりは、ツクールMVのユーザー層も納得していただけたと思います。

本家ではヒーローはキャラ使い捨て扱い。ツクールMV版ではルール変更

ツクールMVコラボでは、町の中心に「ロスター(roster)」という建物があり、
主人公ひとりは固定ですが、ここで7人の仲間から3人を選んで連れていきます。
もちろん、途中交代も可能です。

ロスターとは名簿とか登録者の意味で、建物の名前にするには
ちょっと不思議な気がしますね。
これは、本家では、画面右側に、現在仲間にしているヒーロー一覧が
表示されることにちなんで付けました。
本家では、駅馬車で新しいヒーローを仲間にすることがメインですが、
毎週毎週(注:ダンジョンに1回入ると一週間が経過する)
新しいヒーロー志願が増えていきます。
これは、本家ダーケストダンジョンが、ヒーローたちが敵にやられて亡くなり易いので、
2交代制、3交代制でパーティーを回していくことがよいとされてます。
つまり、キャラクターは使い捨てに近い状態で、
ランダムに作成された仲間志望が、次々補充されて行っている状態です。
探索で全滅したら、仲間を4人失う他、そこで手に入れた金品も戻りません。

一方で、ツクールMVのデータベースでは、
アクターは決められた分だけしか作れず、ランダム生成は難しそうです。
そこで、主人公達8人は、不死身という設定にしました。
これで「ヒーロー使い捨て」のゲームと大きく隔たりが出来ましたが、
その代わり、HPが減れば減るほど、ストレスを受けやすくなる、
という条件を付けました。
本家に倣って、ヒーローのストレスが100になると、そのヒーローは
おかしくなります(Affliction)。命令を無視したり、何もしなかったり、
他のヒーローにストレスをふりまいたりもします。
ストレスは最大200まで上がり、こうなると心臓発作を起こすなどして、
HPが途端に少なくなったり、突然死したりしてしまいます。
ここに目を付けて「仲間のうち3人のストレスが100を超えるか、
誰か一人でもストレスが200に達したら、強制的に街に帰還」
というルールにしました。
一見簡単そうに見えますが、
本家もそれに倣ったコラボ版も、ダンジョン内でHPを回復するのは
それほど容易ではなく、ヒーラーに相当する修道女(Vestal)などを
連れていっても、回復が追い付かないこともあるくらいです。
このため「HP減で被ストレス増」というルールが活きてくるのです。
戦闘中にストレスを減らす職業(クルセイダーやジェスター)もありますが、
早めのHP回復が重要になる、ということです。

本家にない「キャラクター性」を導入

ダーケストダンジョンは、キャラ使い捨てということもあって、
ダンジョンに潜るたびに、ロストすることもあるでしょう。
しかし、本作では8人がずっと不死身のままなので、
何らかのキャラクター性が欲しいと考えていました。
最初担当の方は「ローグライクだし、
そこまで各キャラのキャラクター性は必ずしも必要ではありません」
と伺いましたが、キャラが固定なのだし、何か個性を立てないと
淡白なゲームになると思いました。
そこでまず、最初の説明の段階で、8人のキャラクターが
分かるように、ちょっと工夫をしました。

また、ダンジョン内でキャンプを開いたときに、
皆が元の世界から持ち寄った身の上話をする、といった感じや
そこからEDでも、キャラクター性をかなり重視しています。

これは、昨今、キャラクター性を重視する作品が増えていることも意識してのことです。

キャンプ

本家ダーケストダンジョンでは、長いダンジョンに入る時は、
たきぎがいくつか支給され、任意の場所でキャンプを行うことが出来ますが、
ここは、ダーケストダンジョンで普段あまりセリフのないヒーロー達が
珍しく会話をする場面です。
食糧を使って食事をしてから、ヒーローたちが特有のキャンピングスキルを使い、
少し会話をしてから、一休み。その後、冒険再開の流れです。

僕がキャンプを作ることを提案すると、担当の方からも
「キャンプは是非入れてほしい」と期待されていたので、
MVリメイク版では、ボスの前にキャンプ用のマップに飛ばされる、
という形にしました。

ツクールMVリメイクでは食事のあと、いろんな回復が出来るようにしていますが、
キャンピングスキルは省略したため、誰を選んでも共通です。
また、ここでの会話を重視したのは前述の通りです。
誰を連れて行っても、異なる会話が準備されているので、
これを見るのも楽しみになると思います。
実際の本家では、運が悪いと夜襲(Night Ambush)され、
真っ暗な中戦いを強いられますが、ツクールMVリメイクでは
そういうことはありません。

ここまでのまとめ

以上のようにすることによって、
ダーケストダンジョンとRPGツクールMVの仕様は隔たりが大きいですが、
ツクールMVのゲーム寄りにしつつ、
ダーケストダンジョンの雰囲気を味わってもらえるようになりました。

Darkest Dungeon × RPGツクールMV コラボゲーム作りました!

Darkest Dungeon × RPGツクールMV コラボキャンペーン
http://tkool.jp/mv/dd-campaign/

皆さん、ダークファンタジーローグライクRPG「ダーケストダンジョン」が、8月9日にコンシューマーで発売されます!
Xbox One, Play Station 4, Nintendo Switch

それに伴って、KADOKAWAでは、RPGツクールMVにて、Darkest Dungeon コラボゲーム
「俺がDarkest Dungeonの世界に転生した件」をRPGアツマールにて、公開いたしました!
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm7723

どんなゲームなの?

シナリオ

主人公タケシは、普通の高校生。ある日、不思議な封筒が届いていた。
開けてみると、それはダーケストダンジョンの世界への招待状。
気にせず寝ていると、彼は目が覚めた時、Darkest Dungeonの村(Hamlet)で、クルセイダー(Crusader)になっていた。

「ダンジョンをひとつクリアすれば、元の世界に戻れる」という言葉を胸に彼は仲間を連れてダンジョンに潜り込むが、
だんだん居心地が良くなって帰りたくなくなる……。
元の世界に戻るのか? 続けるのか? それはあなた次第。

システム

RPGツクールMVのプラグイン機能を使い、Darkest Dungeonの様々なシステムを採用しています。

自動生成のダンジョン、ストレス、行動範囲によるスキルの使用制限、食糧、キャンプなどなど……
Darkest Dungeonをプレイしたことがある方も、そうでない方も、きっと新鮮な印象を受けてくれると思います。



本家ダーケストダンジョンとの違い

ツクールMVということで、「キャラクターの設定が命」ってことで、8人のヒーローには、いろんなキャラ設定いれてあります。
これらの中には、本家をプレイした人なら、ニヤリとするネタもあることでしょう。

なお、システム面は、本編にはもっと、こんな要素があります。

  • 松明による明るさ(松明が切れると暗くなっていく)
  • 奇癖(Quirk)。良いものと悪いものがあり、洞窟探索に有利になったり不利になったりする
  • 病気(Disease)。罹ると病院で治すのに結構なお金がかかる
  • 家宝(Heirloom)を集めて、町の施設をグレードアップしていく

などなど……。本コラボゲームではエッセンス重視のため削った部分にも、面白い要素がたくさんあります。


作者からの言葉

制作は僕、神無月サスケが担当させていただきました。
Darkest Dungeonが大好きで、英語版で、Darkest(ノーマル)モードをクリアさせていただいております。
そんな僕が、このゲームの魅力を作るために、RPGツクールMVで腕を振るわせていただきました。

最初は「どんなものでもいい、戦闘やダンジョン探索も必須ではない」と言われたのですが、
せっかく素材にサイドビュー用キャラ素材と、戦闘背景素材があるのだから、利用しない手はないと思い、
プラグインで、自動生成ダンジョンや、オリジナルの戦闘システムをくみ上げました。


戦闘システムは、オリジナルをプレイした方でも、またちょっと違ったスリルを味わえると思います。
キャラクターが使い捨ての原作と異なり、このコラボでは、キャラクターが不死身の代わり、
ストレスが一定数以上になると、強制的にダンジョンから村(Hamlet)へ戻される、というシステムです。
このため、ストレス管理はしっかり行ってくださいね!

あと、どうしても入れたかったのが、キャンプですね。キャンプは原作でも、ヒーローの個性が活きる数少ない場所でした。
本作でも、どこかの世界から転生してきたヒーロー達の独白が見られますので、ぜひ、ここまで、
プレイしてほしいな、って気分です。

このゲームをプレイして、皆さんも、Darkest Dungeonの魅力を垣間見てくれたら、そして、購入してくれたら、と思っております。
また、そしてRPGツクールMV( http://tkool.jp/mv/ )をお使いの皆様、コラボキャンペーンにも何か作って応募してくださいね!

アドベントカレンダー2日目「サンプルゲームに込めた隠し味、その他」

ツクール公式フォーラムにこの半年間ほど携わり、いろんな記事を投稿して参りましたが、まずはその中から特に役立ちそうなものをピックアップし(フォーラム記事以外も含む)、その後、まだ語られていない内容を記そうと思います。

お役立ち記事ピックアップ

モチベ維持のコツ(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/35/page-2#post-507

イベントコマンドのコツ(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/113/

ツクールの数学と心理的要素(命中率、アイテムドロップ率、その他様々)(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/238/

ゲームバランスの取り方(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/425/#post-2961

TinyPngによる画像のサイズ大幅削減(ツイート)
https://twitter.com/ktakaki00/status/859674355248152576

「エミールの小さな冒険」の出来るまで

ツクールフォーラムで結構さんざん語りつくしてきたゲーム論ですが、「エミールの小さな冒険」には、まだまだ様々な隠し味を取り込んでいます。この中で皆さんが気づきにくい部分にフォーカスをあててみます。

戦闘中にアクセサリの付け替えが可能

ChangeWeaponOnBattle.js というプラグインを作りましたが、これは本来、二刀流の人の武器、そうでない人は盾も装備可能に、と考えたものです。
このゲームでは盾の部分にアクセサリを持ってきているため、戦闘中にアクセサリの付け替えが可能です。
このため、「敵の攻撃を自分一人に集中」や、「HPが少ない時、ダメージを大幅に減らしたりリジェネが付く」といったアクセサリに適宜戦況に応じて付け替えることが可能なのです。

「他のメンバーの技が使える」アクセサリの存在

主人公は「魔法」仲間は「体術」と「錬金術」が使えます。アクセサリの中には、装備すると、これらが使えるようになるものがあります。
これはどうやって実装しているのかというと、仲間は全員、この3つの技を全て覚えて行きます。しかし、「魔法」しか使えないキャラは、「体術」などを覚えても使えませんね。アクセサリの特徴で「スキルタイプ追加」を行っているのです。
ただしこれだけだと、レベルアップ時に使えないタイプの技も覚えた旨表示されるため、プラグインでそれを抑制しています。
皆さんのご参考になれば幸いですが、少し注意すべき点があります。それは、「自動戦闘」を可能にした場合、自分が使えないスキルタイプの技も候補に入ってしまうため、それらの技を使ってしまうでしょう。よって、その点は考慮してみてください。

「面倒なことをすると、必ずそれなりの見返りがある」システム

このゲームには「楽器」という武器があります。ところが、誰も装備できません。アクセサリ「吟遊詩人の心」を装備することで、初めて可能になります。

わざわざ他のアクセサリを放棄して楽器を装備するのをためらう人もいるでしょう、しかし、実は楽器は、かなりのバランスブレイカーなのです。ダメージこそほとんど与えられないものの、かなりの確率で敵を状態異常(睡眠や混乱)にしてしまうのです。かなり戦略の幅が広がることでしょう。

もうひとつ例を挙げましょう。秘密基地の仲間が、何の効果もない石をくれます。しかし、この石は「光の石」との合成で強化可能で、2回使うと、なんと「全員の状態異常回復、HP回復、戦闘不能の仲間も復活」という、ドラクエの賢者の石を行く、相当強力なアイテムになってしまいます。

これらは、クリアできない人への救済措置の意味もありますが、一見役立ちそうにないものが、大きな効果を発する例になります。

複雑なフラグ管理

お遍路の森の第3札所では、最初あるじが不在です。月見草の丘に倒れており、蘇生アイテムをあるじに使うか、第3札所に戻って報告すればこのイベントは終了です。

ところが、考えてみてください。ここにはプレイヤーによって、いくつもの行動パターンが考えられます。

  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、(その時点で)見知らぬ男性を助ける
  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、第3札所に相談に行く
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、蘇生アイテムで助ける
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、あるじの所在を伝える

いずれの場合でも不自然のないように、フラグが組まれています。なお、蘇生アイテムを使って助けた場合に限り、戻った後お礼のアイテムが貰えます。

このように「複数の流れが考えられる場合、総当たりで台詞やイベントを準備する」というのは、大変ではありますが、複数回プレイした人なら、展開の違いに、にやりとするかもしれません。

シンボルエンカウントのコツ

このゲーム、拙作では、初のシンボルエンカウント導入でした。動機は、最近のドラクエ7などのリメイクを見るなどして、ランダムエンカウントからシンボルエンカウントへの潮流を感じたからです。

ただし、シンボルエンカウントは敵が多かったり、逃げにくかったりしたら、ストレスを与えてしまいます。

そこで僕が行ったのは、敵シンボルは、特に宝箱を守るなど、無視することも可能だし、戦闘の準備がしやすい場所に配置しました。また、

  • 「大抵の敵はパーティーより足が遅い(=追いつかれにくい)」
  • 「パーティーが敵より一定以上離れると、諦めて持ち場に戻る」
  • 「パーティーが敵よりかなり強いと、逆に逃げる動作を取る」

といった配慮をしました。

シンボルエンカウントには、やたら敵の数を多くする作者が多いが、若干少な目に作るべき……』手前味噌ですが僕が書いた講座にもそう書き加えています。
https://tkool.jp/mv/guide/006_004k.html#03

締切前一日半でバランスを調整するコツ

締切が迫り、尻に火が付いていましたが、大急ぎでやった調整をここに記します。

上記のシンボルエンカウントで「大体プレイヤーは各敵シンボルと1回は戦うだろう」と想定して、その地点に到着する時の平均レベルを決めます。

「炎の石」「光の石」があり、どの装備またはアイテムに使うかによって、全くプレイヤーの強さが読みづらいですが、「武器と防具に均等に使っていくだろう」と想定して、仲間の状態を推定します。これをもとに敵の強さやスキルを決めるのですが、石を拾わなかったり、使う順番を間違えて苦戦することも考えられます。

このため、「救済措置」は欠かせません。具体的には……

  • 最強装備には及ばないがそれに準ずる強さの装備がお金を払えば手に入る(通常、最強装備は「炎の石」や「光の石」で強化して作る)
  • 前述のような「楽器」「ただの石→妖精の恵みの石」「かんしゃく玉」(パワーアップさせると敵全体にスタン+Debuff)のように普通のプレイヤーなら「不便そうだから」と使わない部分にこっそりバランスブレイカー的な威力の技を入れる。

結果、たった1回の通しプレイだけして納品となりましたが、「救済措置」も功を奏したのか、ゲームバランスに関する文句は聞こえてきません。

マップ:ブラック・ウルフさん担当

僕はマップが得意でないので、仕掛けの多い洞窟以外は、ブラック・ウルフさんにお願いしました。彼は、あまり広すぎるとごちゃごちゃするため、一つの大きな町にするのではなく、場面ごとに区切っていました。こうすることによって、場所が把握しやすくなりますね。

また、彼は以下のようなこともしてくれました:

  • OverpassTile.js を使い立体交差を実現
  • 歩行速度のデフォルトを4ではなく倍の5にしたのも彼の提案です。
  • 広場にある噴水の面白いアニメーションの作成
  • 2番目の洞窟は仕掛けだらけなので僕が描きましたが、

 艶出しとして、オブジェや壁の灯りなどで飾っていただきました。

特に広場の噴水などは、イベントコマンドの移動ルートの「カスタム」をうまく利用して作られており、参考になると思います。

シナリオ:ふうきゅうさん担当

彼の書くシナリオは、とにかくスピード感があります。このゲームの第1章は、ほぼ彼の手によってシナリオが描かれていますので、プレイされた方はそのスピード感が理解できるでしょう。
彼曰く、これは小池一夫の影響だと言います。
1日目の最初はお使いイベントですが、行き先のお店の前で突然爆発。その後も仲間が主人公に助けを求めてくるなど、とにかく「前へ、前へ」と話を進めて行っています。こうすることで、プレイヤーは退屈することなく、スリリングな展開にのめり込めるでしょう。
2日目以降は、ダンジョンがメインになるので、主に僕が台詞を組んでいますが、それでも、ふうきゅう氏は、そのダンジョンに関係ない日に行くと、いろんなキャラクターを出して寄り道要素を加えるなど、相当サービス精神旺盛でした。

まとめ

こうして締め切りにギリギリで間に合った(送信が、締切当日の午後6時過ぎ)。一之瀬様から「サスケさん、お元気ですか?」と心配されたのもいい思い出です。

しかしお二方とも、妥協せずにがんがん出来るところまで、やってくれたことについては、本当に感謝しています。

今回紹介した「隠し味」が、皆様の制作の参考になることを願ってやみません。

ぱるんさん逝去から7年

更新時注 2022/09/10 この記事から5年、新たな記事をしたためました。
こちらを先にお読み下さい。
ktakaki.hatenablog.com



※ぱるんさんって誰?という方はこちらをご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/ktakaki/20110302/p1

今年も、この日がやってまいりました。
最近お父様に連絡がつかなかったのですが、
どうやら携帯が壊れスマホに換えたのが原因だったようです。
ありがたいことに、本日、ご連絡をいただきました。

2017年9月10日現在の、ぱるんのお父様への連絡先

ibikikazu@i.softbank.jp

以下、一連のメールのやりとりを許可を得たので公開します。
※各メール、明らかな誤字脱字および改行のみ、修正しております。

お父様からのメール(1通目)

Title:ぱるんの父です
From: ibikikazu@i.softbank.jp
一年振りのご無沙汰です。お変わりありませんか?
先月携帯を壊してしまい、スマホに変えたので、アドレスを変更しました。
なかなか操作に馴染めず、どうにかぱるんの命日までに間に合いました。
先日僕の父親が他界したので、天国は賑やかになると思います。
サスケさんのツイッターは時々見させて頂いてます。体調は良いみたいですが、いかがですか?
今日はぱるんの好物パスタを作りお供えします。
最近は毎日料理をしませんけど、今日はがんばります。
何か息子の事で情報があれば、どんな事でも教えて頂ければ有り難いです。
不躾ではございますが、宜しくお願いたします。

僕からの返信

Title:返信、ありがとうございます
神無月サスケです。
お父様、こちらこそご無沙汰しております。
毎年、この日が近づくと、彼のことを思い出しますね。
同じ思いの方は僕だけでなく、「お父様のメールに連絡しているがなしのつぶて」という
ご相談もいただいておりました。
メールアドレスを変えたと知れば、その方も安心して、お父様に連絡を差し上げられると思います。

今年も、本日午前0時44分には、ツイッター上で皆に呼びかけ、1分間の黙祷を行いました。
一緒に黙祷してくれた方もおり、彼のファンは多かったのだと改めて思いました。

そこで、ふたつお願いがあります。
1.新しいメールアドレスを、ファンのために、これまでと同じ要領で公開してもよいか。
2.お父様のメールの内容を、全文(一部個人情報は伏せる、誤字脱字は直す)引用して公開しても、よいか。
 メールの内容は、きっと多くのファンが知りたがっている情報だと思います。

以上、ご承諾いただけないでしょうか。
もしご承諾いただけたら、きっと、ファンの方は、喜んでいただけると思います。
ファンの方から、連絡も来ると思います。

以上、ご回答お待ちしております。

お父様からのメール(2通目)

Title:Re: 返信、ありがとうございます
はい!喜んで誤字脱字の修正含めて公開おねがいします。
息子ぱるんを追悼して下さる方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
メールが繋がらず申し訳ありませんでした。メールを送ってくれた方々には、何とお詫びしていいやら。
宜しくお伝えしてください。
生きていたら32歳です。一緒に美味い酒でも飲めたと思います。今夜は息子と唐揚げとパスタで乾杯します。

今、感じている事

昨日は、お父様から連絡がなかったので「昨年の七回忌を区切りにしようと、お父様は考えたのか」とも
思っておりました。しかし、そうではないと知り、反省するとともに、心が温まりました。

ぱるんさんの思いは、決して風化していません。こんごもずっと、ネット上で彼の遺志は生き続けるでしょう。

Moon Whistle の曲に作詞しました・第2弾

前回、拙作ムンホイのフィールド曲に歌詞を付けたところ、大変好評でしたので、ふたたびいくつか歌詞を作成しました。

今回は4曲です。前回のオーソドックスなのと比べて、若干変化球を選びました。
好評ならまたやります。

曲のダウンロード

下記の歌詞の曲は、ここからダウンロード出来ます。
http://fhouse.s17.xrea.com/moonwhistle_remake/midimh.html

いろんな人たち (XMIDI009.mid)

1.

(安いよ安いよ お買い得だよ)
八百屋のご主人
(うなぎの蒲焼 香り振りまく)
魚屋のご主人
みな、立ち止まり、商品ながめる
お客さんを 魅了していく

2.

(タイムサービスの 鐘鳴らすよ)
ブティック店員さん
(試食をしてって そっと勧める)
パン屋のお兄さん
みな つられて 不可抗力で
引き寄せられる いろんなお客さん

3.

(ダイエットには この薬!)
薬局の 看板
(眠ってる和服 ありません?)
問いかける 着物屋
商売努力
みんな 必死に 頑張るお店
応援 したくなる

4.

(うちはスポーツマージャンです)
老舗の雀荘
(お酒とカラオケをどうぞ)
カラオケ喫茶
どんな お店なの 僕には分からない
でも なんだか 悪い気はしない

エレベーターダンジョン(XMIDI013.mid)

(1…3…6…9…10…12…15…19)
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
ビルの中 ずらりと並んでる
エレベーターの 奇妙な表示板
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
どこの階に どうすれば 行けるの?
どの箱に 乗れば 辿り付けるんだろう?
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
あーわからない もうお手上げ
だけど 行かなくちゃ
ひとつひとつ 数字を覚え
ひとつずつ ひとつずつ やらなきゃ

僕は行かなきゃ
待ってる人のため
(そう……だ……やる……んだ……)
絶対あきらめない!

おうたをうたおう(XMIDI020.mid)

1.

さあみなさん きょうは みんなに
あたらしい おうたを おしえましょう
まずはわたしが うたうから
みんなそれに つづけて うたってね
さいしょは みんな なれないでしょうけど
くりかえす うちに きっと おぼえる
あたらしい おうたを おぼえた あとには
おうちの ひとにも うたってあげて

2.

さあみなさん きょうは みんなに
かみしばいを みせて あげますよ
わるいおにも こわいおばけも
でてくるけれど こわがらないで
さいごには みんな せいぎのみかたが
わるいやつ せいばい してくれる
だからみんな あくびせずに しんけんに きいてね
わたしの はなす この はなしを

嵐の予感(xmidi064.mid)

夕間暮れ 忍び寄る
暗闇の中 ひっそりと
にじり寄る この空気
きっと何かが 僕を 狙ってる
空には三日月 星の群れ
穏やかに 僕を照らす
でもその空と この風は
じきに 嵐を 呼び起こすだろう……

Moon Whistle の曲に作詞しました

Moon Whistle は 1999年公開。リメイクも2011年に出ており、その間、歌詞を作ってくれる人がたくさんいました。
フリゲの中には作者公式の歌詞があるゲーム音楽もあるようですね。ふと気が向いたので、主要なフィールド曲に歌詞をつけてみました。
普段はあまり作詞などしない僕なのでたどたどしいのはご容赦を。

曲のダウンロード

下記の歌詞の曲は、ここからダウンロード出来ます。
http://fhouse.s17.xrea.com/moonwhistle_remake/midimh.html

いざ行かん (XMIDI005.mid)

春の土手を歩く風の匂い
草は萌えてちょうちょは舞いを楽しむ
川は流れメダカが泳ぐ
柔らかい日差しが川を照らして 輝く
ふと浮かぶよ あの日の思い出
みんなわいわい 陽気の中 駆け回った
季節巡り 雪が解けて また来た春 また思い出になる

ひざしの中を (XMIDI024.mid)

青空を覆ううろこ雲
ビルの谷間から覗く太陽
心地よい風が吹いてくる
空き地から聴こえるよ虫の声

セイタカアワダチソウも 赤く色づくもみじも
どうして 僕の心を 揺るがすの?

友達と一緒に出かけよう
きっとみんなおんなじ気持ちだろう
国道沿いの枯れすすき
遠くまで道はずっと続いてる

夕闇にとける街 (XMIDI001.mid)

お日様が 低い空で 町を赤く染める
街灯が 僕の影 長く延ばしてるよ

公園の 賑やかな声 今はもう静まった
誰かさんの サッカーボール ぽつんとたたずむ

夕焼けに 光る 一番星
晩御飯が 待ってる おうちに 帰ろう
あしたまた 遊ぼう

さわがしい大通り (XMIDI006.mid)

1.

忙しそうに歩く人達 腕時計 見ている
窓越しに喫茶店 見てみたら さぼってる サラリーマン

ビルが 立ち並んで 見知らぬ人が 通り過ぎる
窓の ガラス光る 昼の太陽 反射する

黒い革靴 書類手に持ち 繁華街 
無心に 駆け回る 大人たちの午後

2.

犬の鳴き声 鳥のさえずり 自動車のクラクション
しゃれた生垣 干された布団 青空の飛行機雲

路地の 隅の方で 井戸端会議 おばさん達
デパートの 駐車場で こっそり遊んでる 子ども達

晴れた昼下がり けだるい午後 元気出し
さあ 歩き出す 探検だ 知らないとこ 行くぞ

手をつないで歩こう (XMIDI054.mid)

住んでる 町は違っても 心は通じ合うよ
歳の差 気にならないよ 仲良く行こう

僕が困れば 助けてくれて
君が困れば 僕が行く
何も話をしなくても 笑顔が一番
言葉はいらない 分かり合える

手と手を とりあおう 友達になろう
嫌な子 いるけど きっと仲良くなれる
一緒に 歩こう 街は魅力で一杯
僕らみんな一緒に 凄い冒険するぞ

(追記 2017.04.23 若干歌詞に不自然な部分があったので修正を行いました)

ムーンホイッスル小説版を電子出版します

ご無沙汰しておりました、久々のブログ記事です。

今回、拙作ムーンホイッスル(Moon Whistle)の小説版を、Amazonで電子出版することになったので、お知らせです。既にアマゾンで登録を済ませており、数日内に公開される流れです。

ここまでの大まかな流れ

このセルフノベライズは、僕が2013年の春から夏にかけて仕上げたものです。おりしもフリーゲームのノベライズが盛んになっていた時期、ということで執筆を思いつきました。

2013年の9月に、某社の編集者さんに読んでいただける機会があり、内容としては、一定の理解を示していただけたのですが、事情があって出版には至りませんでした。

それは、ライトノベル専門の編集部だったこともあり、「あまりライトノベルらしくない」という理由が大きかったようです。確かに、キャラクターを立てるというより、ちょっと児童文学っぽい描写が多いのは僕も承知しています。

もう一つは、「長年愛されておりファンのすそ野が広いのは事実だが、ここ数年の盛り上がりには欠ける」という点も挙げられました。

そういうわけでその編集部では出していただけませんでしたが、丁寧な対応をしてくれたと感謝しています。

そして、同じ会社の別の書籍部に渡してくださいました。これが2014年1月のことです。

しかしそちらの編集者さんからは、あまり良い対応をしていただけませんでした。いくつかのフリーゲームのノベライズを担当している方なのですが、僕の小説は、いつまでたっても読んでもらえないばかりか、こちらがメールで相談してもなしのつぶてということが続きました。興味がなくても、最低限、読んでは欲しかった、それは無理でもきちんとその旨ご連絡いただけたら、と思っています。このように、編集者さんにも、いろんなタイプがあるのだと痛感しました。

2013年の末ごろに、「ムーンホイッスルが商業展開するかも」ということを僕はツイッターで表明したのですが、それはこの件が進んでいることでした。かなりいろいろと考慮してもらったのですが、前述のとおり、出版には至りませんでした。

電子出版で出してみることに

そういうわけで、一度はお蔵入りにした小説ですが、その後「紙の書籍がだめでも、電子出版ならいけるんじゃないか」と思うに至りました。

なにしろ、昨年あたりから、僕のよく知っている人達が次々に電子出版に参加しており、あちこちで話を聞いていたからです。

これまで「紙の書籍でないと、読みたい人の手に届かない」そう思っていたのですが、これだけ電子書籍が普及してきたなら、その懸念は小さくなる、と感じました。

それで早速、その準備を始めました。2014年9月ごろのことです。

その後、表紙絵やイラストを描いてくれる方(飛鳥好一さん)とも出会い、こうやって電子出版することが出来ました。感謝。

読んでくれる皆様に感謝

今回、こちらの小説については、いろんな方に読んでもらいました。そして、いろんな意見をいただけました。

特に、今回、電子書籍での販売に至ったのも、知人からのアドバイスでした。

小説を公開するだけなら「小説家になろう」など、無償で公開可能なサイトはたくさんあります。しかし、今回は、あえて有償にした方がいい、という意見が圧倒的でした。フリーで公開しても、数件感想書いてもらうだけで風化しかねない、といった意見が聞かれました。

この「フリーより有償の方がいい」という意見については、僕の中では肯定する気持ちと否定する気持ちが半々でしたが、やはり「本当に読みたい人にだけ手に取ってもらいたい」という気持ちで実験的な要素も含めています。

金額はひとまず5ドル(500〜600円くらい)にしました。こちらも、僕は300円くらいにするかと思っていましたが、それじゃ安い、というご意見を伺ってのことです。確かに、本当に読みたい人にだけ届けるのなら、妥当かもしれません。価格は変更可能らしいので、少しこの金額で余裕を見ます。

今しばらくお待ちを

現時点(17:04 2015/04/25)ではまだ公開されていません。

公開されたら、恐らく、プレビューとして序盤が読めると思いますので、興味がある方は見ていただけたら幸いです。

追記(21:05 2015/04/25):公開されました!

小説ムーンホイッスル
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00WO3O3O0

今後地味にプロモーションしていきたいと思います。