神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

アドベントカレンダー2日目「サンプルゲームに込めた隠し味、その他」

ツクール公式フォーラムにこの半年間ほど携わり、いろんな記事を投稿して参りましたが、まずはその中から特に役立ちそうなものをピックアップし(フォーラム記事以外も含む)、その後、まだ語られていない内容を記そうと思います。

お役立ち記事ピックアップ

モチベ維持のコツ(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/35/page-2#post-507

イベントコマンドのコツ(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/113/

ツクールの数学と心理的要素(命中率、アイテムドロップ率、その他様々)(スレッド)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/238/

ゲームバランスの取り方(記事)
https://forum.tkool.jp/index.php?threads/425/#post-2961

TinyPngによる画像のサイズ大幅削減(ツイート)
https://twitter.com/ktakaki00/status/859674355248152576

「エミールの小さな冒険」の出来るまで

ツクールフォーラムで結構さんざん語りつくしてきたゲーム論ですが、「エミールの小さな冒険」には、まだまだ様々な隠し味を取り込んでいます。この中で皆さんが気づきにくい部分にフォーカスをあててみます。

戦闘中にアクセサリの付け替えが可能

ChangeWeaponOnBattle.js というプラグインを作りましたが、これは本来、二刀流の人の武器、そうでない人は盾も装備可能に、と考えたものです。
このゲームでは盾の部分にアクセサリを持ってきているため、戦闘中にアクセサリの付け替えが可能です。
このため、「敵の攻撃を自分一人に集中」や、「HPが少ない時、ダメージを大幅に減らしたりリジェネが付く」といったアクセサリに適宜戦況に応じて付け替えることが可能なのです。

「他のメンバーの技が使える」アクセサリの存在

主人公は「魔法」仲間は「体術」と「錬金術」が使えます。アクセサリの中には、装備すると、これらが使えるようになるものがあります。
これはどうやって実装しているのかというと、仲間は全員、この3つの技を全て覚えて行きます。しかし、「魔法」しか使えないキャラは、「体術」などを覚えても使えませんね。アクセサリの特徴で「スキルタイプ追加」を行っているのです。
ただしこれだけだと、レベルアップ時に使えないタイプの技も覚えた旨表示されるため、プラグインでそれを抑制しています。
皆さんのご参考になれば幸いですが、少し注意すべき点があります。それは、「自動戦闘」を可能にした場合、自分が使えないスキルタイプの技も候補に入ってしまうため、それらの技を使ってしまうでしょう。よって、その点は考慮してみてください。

「面倒なことをすると、必ずそれなりの見返りがある」システム

このゲームには「楽器」という武器があります。ところが、誰も装備できません。アクセサリ「吟遊詩人の心」を装備することで、初めて可能になります。

わざわざ他のアクセサリを放棄して楽器を装備するのをためらう人もいるでしょう、しかし、実は楽器は、かなりのバランスブレイカーなのです。ダメージこそほとんど与えられないものの、かなりの確率で敵を状態異常(睡眠や混乱)にしてしまうのです。かなり戦略の幅が広がることでしょう。

もうひとつ例を挙げましょう。秘密基地の仲間が、何の効果もない石をくれます。しかし、この石は「光の石」との合成で強化可能で、2回使うと、なんと「全員の状態異常回復、HP回復、戦闘不能の仲間も復活」という、ドラクエの賢者の石を行く、相当強力なアイテムになってしまいます。

これらは、クリアできない人への救済措置の意味もありますが、一見役立ちそうにないものが、大きな効果を発する例になります。

複雑なフラグ管理

お遍路の森の第3札所では、最初あるじが不在です。月見草の丘に倒れており、蘇生アイテムをあるじに使うか、第3札所に戻って報告すればこのイベントは終了です。

ところが、考えてみてください。ここにはプレイヤーによって、いくつもの行動パターンが考えられます。

  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、(その時点で)見知らぬ男性を助ける
  • 札所で話を訊く前に月見草の丘に行き、第3札所に相談に行く
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、蘇生アイテムで助ける
  • 第3札所で話を聞いてから月見草の丘に行き、あるじの所在を伝える

いずれの場合でも不自然のないように、フラグが組まれています。なお、蘇生アイテムを使って助けた場合に限り、戻った後お礼のアイテムが貰えます。

このように「複数の流れが考えられる場合、総当たりで台詞やイベントを準備する」というのは、大変ではありますが、複数回プレイした人なら、展開の違いに、にやりとするかもしれません。

シンボルエンカウントのコツ

このゲーム、拙作では、初のシンボルエンカウント導入でした。動機は、最近のドラクエ7などのリメイクを見るなどして、ランダムエンカウントからシンボルエンカウントへの潮流を感じたからです。

ただし、シンボルエンカウントは敵が多かったり、逃げにくかったりしたら、ストレスを与えてしまいます。

そこで僕が行ったのは、敵シンボルは、特に宝箱を守るなど、無視することも可能だし、戦闘の準備がしやすい場所に配置しました。また、

  • 「大抵の敵はパーティーより足が遅い(=追いつかれにくい)」
  • 「パーティーが敵より一定以上離れると、諦めて持ち場に戻る」
  • 「パーティーが敵よりかなり強いと、逆に逃げる動作を取る」

といった配慮をしました。

シンボルエンカウントには、やたら敵の数を多くする作者が多いが、若干少な目に作るべき……』手前味噌ですが僕が書いた講座にもそう書き加えています。
https://tkool.jp/mv/guide/006_004k.html#03

締切前一日半でバランスを調整するコツ

締切が迫り、尻に火が付いていましたが、大急ぎでやった調整をここに記します。

上記のシンボルエンカウントで「大体プレイヤーは各敵シンボルと1回は戦うだろう」と想定して、その地点に到着する時の平均レベルを決めます。

「炎の石」「光の石」があり、どの装備またはアイテムに使うかによって、全くプレイヤーの強さが読みづらいですが、「武器と防具に均等に使っていくだろう」と想定して、仲間の状態を推定します。これをもとに敵の強さやスキルを決めるのですが、石を拾わなかったり、使う順番を間違えて苦戦することも考えられます。

このため、「救済措置」は欠かせません。具体的には……

  • 最強装備には及ばないがそれに準ずる強さの装備がお金を払えば手に入る(通常、最強装備は「炎の石」や「光の石」で強化して作る)
  • 前述のような「楽器」「ただの石→妖精の恵みの石」「かんしゃく玉」(パワーアップさせると敵全体にスタン+Debuff)のように普通のプレイヤーなら「不便そうだから」と使わない部分にこっそりバランスブレイカー的な威力の技を入れる。

結果、たった1回の通しプレイだけして納品となりましたが、「救済措置」も功を奏したのか、ゲームバランスに関する文句は聞こえてきません。

マップ:ブラック・ウルフさん担当

僕はマップが得意でないので、仕掛けの多い洞窟以外は、ブラック・ウルフさんにお願いしました。彼は、あまり広すぎるとごちゃごちゃするため、一つの大きな町にするのではなく、場面ごとに区切っていました。こうすることによって、場所が把握しやすくなりますね。

また、彼は以下のようなこともしてくれました:

  • OverpassTile.js を使い立体交差を実現
  • 歩行速度のデフォルトを4ではなく倍の5にしたのも彼の提案です。
  • 広場にある噴水の面白いアニメーションの作成
  • 2番目の洞窟は仕掛けだらけなので僕が描きましたが、

 艶出しとして、オブジェや壁の灯りなどで飾っていただきました。

特に広場の噴水などは、イベントコマンドの移動ルートの「カスタム」をうまく利用して作られており、参考になると思います。

シナリオ:ふうきゅうさん担当

彼の書くシナリオは、とにかくスピード感があります。このゲームの第1章は、ほぼ彼の手によってシナリオが描かれていますので、プレイされた方はそのスピード感が理解できるでしょう。
彼曰く、これは小池一夫の影響だと言います。
1日目の最初はお使いイベントですが、行き先のお店の前で突然爆発。その後も仲間が主人公に助けを求めてくるなど、とにかく「前へ、前へ」と話を進めて行っています。こうすることで、プレイヤーは退屈することなく、スリリングな展開にのめり込めるでしょう。
2日目以降は、ダンジョンがメインになるので、主に僕が台詞を組んでいますが、それでも、ふうきゅう氏は、そのダンジョンに関係ない日に行くと、いろんなキャラクターを出して寄り道要素を加えるなど、相当サービス精神旺盛でした。

まとめ

こうして締め切りにギリギリで間に合った(送信が、締切当日の午後6時過ぎ)。一之瀬様から「サスケさん、お元気ですか?」と心配されたのもいい思い出です。

しかしお二方とも、妥協せずにがんがん出来るところまで、やってくれたことについては、本当に感謝しています。

今回紹介した「隠し味」が、皆様の制作の参考になることを願ってやみません。

ぱるんさん逝去から7年

更新時注 2022/09/10 この記事から5年、新たな記事をしたためました。
こちらを先にお読み下さい。
ktakaki.hatenablog.com



※ぱるんさんって誰?という方はこちらをご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/ktakaki/20110302/p1

今年も、この日がやってまいりました。
最近お父様に連絡がつかなかったのですが、
どうやら携帯が壊れスマホに換えたのが原因だったようです。
ありがたいことに、本日、ご連絡をいただきました。

2017年9月10日現在の、ぱるんのお父様への連絡先

ibikikazu@i.softbank.jp

以下、一連のメールのやりとりを許可を得たので公開します。
※各メール、明らかな誤字脱字および改行のみ、修正しております。

お父様からのメール(1通目)

Title:ぱるんの父です
From: ibikikazu@i.softbank.jp
一年振りのご無沙汰です。お変わりありませんか?
先月携帯を壊してしまい、スマホに変えたので、アドレスを変更しました。
なかなか操作に馴染めず、どうにかぱるんの命日までに間に合いました。
先日僕の父親が他界したので、天国は賑やかになると思います。
サスケさんのツイッターは時々見させて頂いてます。体調は良いみたいですが、いかがですか?
今日はぱるんの好物パスタを作りお供えします。
最近は毎日料理をしませんけど、今日はがんばります。
何か息子の事で情報があれば、どんな事でも教えて頂ければ有り難いです。
不躾ではございますが、宜しくお願いたします。

僕からの返信

Title:返信、ありがとうございます
神無月サスケです。
お父様、こちらこそご無沙汰しております。
毎年、この日が近づくと、彼のことを思い出しますね。
同じ思いの方は僕だけでなく、「お父様のメールに連絡しているがなしのつぶて」という
ご相談もいただいておりました。
メールアドレスを変えたと知れば、その方も安心して、お父様に連絡を差し上げられると思います。

今年も、本日午前0時44分には、ツイッター上で皆に呼びかけ、1分間の黙祷を行いました。
一緒に黙祷してくれた方もおり、彼のファンは多かったのだと改めて思いました。

そこで、ふたつお願いがあります。
1.新しいメールアドレスを、ファンのために、これまでと同じ要領で公開してもよいか。
2.お父様のメールの内容を、全文(一部個人情報は伏せる、誤字脱字は直す)引用して公開しても、よいか。
 メールの内容は、きっと多くのファンが知りたがっている情報だと思います。

以上、ご承諾いただけないでしょうか。
もしご承諾いただけたら、きっと、ファンの方は、喜んでいただけると思います。
ファンの方から、連絡も来ると思います。

以上、ご回答お待ちしております。

お父様からのメール(2通目)

Title:Re: 返信、ありがとうございます
はい!喜んで誤字脱字の修正含めて公開おねがいします。
息子ぱるんを追悼して下さる方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
メールが繋がらず申し訳ありませんでした。メールを送ってくれた方々には、何とお詫びしていいやら。
宜しくお伝えしてください。
生きていたら32歳です。一緒に美味い酒でも飲めたと思います。今夜は息子と唐揚げとパスタで乾杯します。

今、感じている事

昨日は、お父様から連絡がなかったので「昨年の七回忌を区切りにしようと、お父様は考えたのか」とも
思っておりました。しかし、そうではないと知り、反省するとともに、心が温まりました。

ぱるんさんの思いは、決して風化していません。こんごもずっと、ネット上で彼の遺志は生き続けるでしょう。

Moon Whistle の曲に作詞しました・第2弾

前回、拙作ムンホイのフィールド曲に歌詞を付けたところ、大変好評でしたので、ふたたびいくつか歌詞を作成しました。

今回は4曲です。前回のオーソドックスなのと比べて、若干変化球を選びました。
好評ならまたやります。

曲のダウンロード

下記の歌詞の曲は、ここからダウンロード出来ます。
http://fhouse.s17.xrea.com/moonwhistle_remake/midimh.html

いろんな人たち (XMIDI009.mid)

1.

(安いよ安いよ お買い得だよ)
八百屋のご主人
(うなぎの蒲焼 香り振りまく)
魚屋のご主人
みな、立ち止まり、商品ながめる
お客さんを 魅了していく

2.

(タイムサービスの 鐘鳴らすよ)
ブティック店員さん
(試食をしてって そっと勧める)
パン屋のお兄さん
みな つられて 不可抗力で
引き寄せられる いろんなお客さん

3.

(ダイエットには この薬!)
薬局の 看板
(眠ってる和服 ありません?)
問いかける 着物屋
商売努力
みんな 必死に 頑張るお店
応援 したくなる

4.

(うちはスポーツマージャンです)
老舗の雀荘
(お酒とカラオケをどうぞ)
カラオケ喫茶
どんな お店なの 僕には分からない
でも なんだか 悪い気はしない

エレベーターダンジョン(XMIDI013.mid)

(1…3…6…9…10…12…15…19)
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
ビルの中 ずらりと並んでる
エレベーターの 奇妙な表示板
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
どこの階に どうすれば 行けるの?
どの箱に 乗れば 辿り付けるんだろう?
(とびとびとびとび……からくりだ
とびとびとびとび……こまる)
あーわからない もうお手上げ
だけど 行かなくちゃ
ひとつひとつ 数字を覚え
ひとつずつ ひとつずつ やらなきゃ

僕は行かなきゃ
待ってる人のため
(そう……だ……やる……んだ……)
絶対あきらめない!

おうたをうたおう(XMIDI020.mid)

1.

さあみなさん きょうは みんなに
あたらしい おうたを おしえましょう
まずはわたしが うたうから
みんなそれに つづけて うたってね
さいしょは みんな なれないでしょうけど
くりかえす うちに きっと おぼえる
あたらしい おうたを おぼえた あとには
おうちの ひとにも うたってあげて

2.

さあみなさん きょうは みんなに
かみしばいを みせて あげますよ
わるいおにも こわいおばけも
でてくるけれど こわがらないで
さいごには みんな せいぎのみかたが
わるいやつ せいばい してくれる
だからみんな あくびせずに しんけんに きいてね
わたしの はなす この はなしを

嵐の予感(xmidi064.mid)

夕間暮れ 忍び寄る
暗闇の中 ひっそりと
にじり寄る この空気
きっと何かが 僕を 狙ってる
空には三日月 星の群れ
穏やかに 僕を照らす
でもその空と この風は
じきに 嵐を 呼び起こすだろう……

Moon Whistle の曲に作詞しました

Moon Whistle は 1999年公開。リメイクも2011年に出ており、その間、歌詞を作ってくれる人がたくさんいました。
フリゲの中には作者公式の歌詞があるゲーム音楽もあるようですね。ふと気が向いたので、主要なフィールド曲に歌詞をつけてみました。
普段はあまり作詞などしない僕なのでたどたどしいのはご容赦を。

曲のダウンロード

下記の歌詞の曲は、ここからダウンロード出来ます。
http://fhouse.s17.xrea.com/moonwhistle_remake/midimh.html

いざ行かん (XMIDI005.mid)

春の土手を歩く風の匂い
草は萌えてちょうちょは舞いを楽しむ
川は流れメダカが泳ぐ
柔らかい日差しが川を照らして 輝く
ふと浮かぶよ あの日の思い出
みんなわいわい 陽気の中 駆け回った
季節巡り 雪が解けて また来た春 また思い出になる

ひざしの中を (XMIDI024.mid)

青空を覆ううろこ雲
ビルの谷間から覗く太陽
心地よい風が吹いてくる
空き地から聴こえるよ虫の声

セイタカアワダチソウも 赤く色づくもみじも
どうして 僕の心を 揺るがすの?

友達と一緒に出かけよう
きっとみんなおんなじ気持ちだろう
国道沿いの枯れすすき
遠くまで道はずっと続いてる

夕闇にとける街 (XMIDI001.mid)

お日様が 低い空で 町を赤く染める
街灯が 僕の影 長く延ばしてるよ

公園の 賑やかな声 今はもう静まった
誰かさんの サッカーボール ぽつんとたたずむ

夕焼けに 光る 一番星
晩御飯が 待ってる おうちに 帰ろう
あしたまた 遊ぼう

さわがしい大通り (XMIDI006.mid)

1.

忙しそうに歩く人達 腕時計 見ている
窓越しに喫茶店 見てみたら さぼってる サラリーマン

ビルが 立ち並んで 見知らぬ人が 通り過ぎる
窓の ガラス光る 昼の太陽 反射する

黒い革靴 書類手に持ち 繁華街 
無心に 駆け回る 大人たちの午後

2.

犬の鳴き声 鳥のさえずり 自動車のクラクション
しゃれた生垣 干された布団 青空の飛行機雲

路地の 隅の方で 井戸端会議 おばさん達
デパートの 駐車場で こっそり遊んでる 子ども達

晴れた昼下がり けだるい午後 元気出し
さあ 歩き出す 探検だ 知らないとこ 行くぞ

手をつないで歩こう (XMIDI054.mid)

住んでる 町は違っても 心は通じ合うよ
歳の差 気にならないよ 仲良く行こう

僕が困れば 助けてくれて
君が困れば 僕が行く
何も話をしなくても 笑顔が一番
言葉はいらない 分かり合える

手と手を とりあおう 友達になろう
嫌な子 いるけど きっと仲良くなれる
一緒に 歩こう 街は魅力で一杯
僕らみんな一緒に 凄い冒険するぞ

(追記 2017.04.23 若干歌詞に不自然な部分があったので修正を行いました)

ムーンホイッスル小説版を電子出版します

ご無沙汰しておりました、久々のブログ記事です。

今回、拙作ムーンホイッスル(Moon Whistle)の小説版を、Amazonで電子出版することになったので、お知らせです。既にアマゾンで登録を済ませており、数日内に公開される流れです。

ここまでの大まかな流れ

このセルフノベライズは、僕が2013年の春から夏にかけて仕上げたものです。おりしもフリーゲームのノベライズが盛んになっていた時期、ということで執筆を思いつきました。

2013年の9月に、某社の編集者さんに読んでいただける機会があり、内容としては、一定の理解を示していただけたのですが、事情があって出版には至りませんでした。

それは、ライトノベル専門の編集部だったこともあり、「あまりライトノベルらしくない」という理由が大きかったようです。確かに、キャラクターを立てるというより、ちょっと児童文学っぽい描写が多いのは僕も承知しています。

もう一つは、「長年愛されておりファンのすそ野が広いのは事実だが、ここ数年の盛り上がりには欠ける」という点も挙げられました。

そういうわけでその編集部では出していただけませんでしたが、丁寧な対応をしてくれたと感謝しています。

そして、同じ会社の別の書籍部に渡してくださいました。これが2014年1月のことです。

しかしそちらの編集者さんからは、あまり良い対応をしていただけませんでした。いくつかのフリーゲームのノベライズを担当している方なのですが、僕の小説は、いつまでたっても読んでもらえないばかりか、こちらがメールで相談してもなしのつぶてということが続きました。興味がなくても、最低限、読んでは欲しかった、それは無理でもきちんとその旨ご連絡いただけたら、と思っています。このように、編集者さんにも、いろんなタイプがあるのだと痛感しました。

2013年の末ごろに、「ムーンホイッスルが商業展開するかも」ということを僕はツイッターで表明したのですが、それはこの件が進んでいることでした。かなりいろいろと考慮してもらったのですが、前述のとおり、出版には至りませんでした。

電子出版で出してみることに

そういうわけで、一度はお蔵入りにした小説ですが、その後「紙の書籍がだめでも、電子出版ならいけるんじゃないか」と思うに至りました。

なにしろ、昨年あたりから、僕のよく知っている人達が次々に電子出版に参加しており、あちこちで話を聞いていたからです。

これまで「紙の書籍でないと、読みたい人の手に届かない」そう思っていたのですが、これだけ電子書籍が普及してきたなら、その懸念は小さくなる、と感じました。

それで早速、その準備を始めました。2014年9月ごろのことです。

その後、表紙絵やイラストを描いてくれる方(飛鳥好一さん)とも出会い、こうやって電子出版することが出来ました。感謝。

読んでくれる皆様に感謝

今回、こちらの小説については、いろんな方に読んでもらいました。そして、いろんな意見をいただけました。

特に、今回、電子書籍での販売に至ったのも、知人からのアドバイスでした。

小説を公開するだけなら「小説家になろう」など、無償で公開可能なサイトはたくさんあります。しかし、今回は、あえて有償にした方がいい、という意見が圧倒的でした。フリーで公開しても、数件感想書いてもらうだけで風化しかねない、といった意見が聞かれました。

この「フリーより有償の方がいい」という意見については、僕の中では肯定する気持ちと否定する気持ちが半々でしたが、やはり「本当に読みたい人にだけ手に取ってもらいたい」という気持ちで実験的な要素も含めています。

金額はひとまず5ドル(500〜600円くらい)にしました。こちらも、僕は300円くらいにするかと思っていましたが、それじゃ安い、というご意見を伺ってのことです。確かに、本当に読みたい人にだけ届けるのなら、妥当かもしれません。価格は変更可能らしいので、少しこの金額で余裕を見ます。

今しばらくお待ちを

現時点(17:04 2015/04/25)ではまだ公開されていません。

公開されたら、恐らく、プレビューとして序盤が読めると思いますので、興味がある方は見ていただけたら幸いです。

追記(21:05 2015/04/25):公開されました!

小説ムーンホイッスル
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00WO3O3O0

今後地味にプロモーションしていきたいと思います。

ぱるんさんの命日

9月10日、それはツクラーの僕にとって忘れられない日となりました。2010年9月10日、ぱるんさんは9階から飛び降り、この世を去りました。僕がその事実を彼のお父様から聞かされたのは2011年の2月28日でした。

今も話題になっているRe:Kinder、それを完成させてからわずか2ヵ月後のことだったようです。

それ以来、この日は僕も特別な感慨をもって迎えます。今年もお父様とメールのやり取りをいたしました。

※詳細:ぱるんさん、逝去 2011-03-02

http://d.hatena.ne.jp/ktakaki/20110302/p1

メールの内容など一部公開

許可をいただいたので、お父様のメールから引用させていただきます。

病院で息子を、確認したあの顔が今でもハッキリと焼き付いています。死亡診断書は9月10日0時44分なのですが、マンションから、飛んだのは、9日の11時53分です。心肺停止状態と聞いています。ですから、正確には僕だけは今夜が命日と思っています。でも墓参りには、明日いきます。

他にも、墓参りに、好きだったお菓子をお供えした話を聞かせていただいたり、かけつけた葬儀屋にて撮影した彼の写真なども拝見しております。

写真

いくつか、写真を送っていただきましたので、許可を戴いて、公開させていただきます。

※写真をクリックし、「オリジナルサイズで表示」を選ぶと、オリジナルサイズでご覧いただけます。

ぱるんさんの部屋(2012年撮影)


生前の配置のまま、綺麗に手入れが施されているようです

ぱるんさんの作品


手描きの作品が多数残されているようです。

幼き日のぱるんさん(左)とお父様(右)

高校時代の作品


文化祭に提供した絵だそうです

ぱるんさんを偲んで

ぱるんさんは本当に感性の強い方でした。彼が訴えかけたものを思うと、今でも考えがとまらなくなります。ツクラーの皆さん、ぜひ、ぱるんさんのことを偲んでください。そして、彼の分まで生き、そして、創作を続け、遺志を引き継ぎましょう。

同人作家が自サイトに同業者作品のレビューページを作るとはがゆい思いをするという話

はじめに

かつて僕はフリーゲームのレビューページを自分のサイトに開設していた。僕はMoon Whistleというフリーゲームの作者である。

しかし、大変歯がゆい思いをしていた。ずっと黙っていたが、ちょっと思うことがあったので、書かせてもらう。

本題

僕も作品を作る人だ。なのにそれを完全に無視して他の作品ばかりを褒めるメールを送ってくる人があとを絶たなかった。他にも、同業者(他のレビューサイトの人)が宣伝8割に挨拶に来たのだが、僕がそのサイトに行くと、僕がライバル視している同列レベルの作品がずらりと紹介される中、僕の作品のレビューはない……それならわざわざ宣伝しにくるなよ、そんなことが何度もあってうんざりしていた。

たとえばトヨタの子会社の工場にあなたが勤務するとして、通勤にトヨタ以外の車を使うのはありだろうか。社会人なら答えはおのずと分かる。だが、その常識を持っているであろう人が、僕の作品(=うちの子)が紹介されておらず「よその子」ばかりをほめちぎっているサイトを平気で僕に紹介する。それが同人創作の世界の現実である。そんな無礼なのは、世間知らずの学生さんだけだと思うだろう、しかしこれが社会人にも多かった。

無理もない。レビューのページを見に来た大抵の人は僕の作品など知らない。僕がレビューしている「よその子」が好きなだけなのだ。僕のことなど、調べようともしないし、そもそも僕が創作者であることさえ知らないかもしれない。

僕は大変歯がゆい思いをしていた。僕の作品は人を選ぶとはいえ、エンターブレインのコンテストで受賞している、一応、それなりに知名度のある作品だと自負していた。それがここまで相手にされていなかったのか、と落胆した。

この気持ち、共感してくれる人は少ないかもしれない。当時、フリーゲーム作者とレビュワーを兼務していて、どちらでも名を挙げている人を見かけなかったからである。しかし、これは同人世界に共通の問題だと感じた、だからこそ言わせて貰う。

もしあなたが創作者でレビューページを自分のサイトに作るなら、あなたが同列、ライバル視している「よその子」ばかりが褒められて「うちの子」は8割がた完全無視されるだろう。同ジャンルのレビューページを作っている人が挨拶に来るが、その方のサイトを見に行くと自分が同列に思っている「よその子」がべた褒めされ「うちの子」が完全に無視されていることが8割である。そのことを覚悟しなければならない、と。

フリーゲームというのは同人の中でもフリーソフト、つまり無料の世界である。そこでは、プレイして反響をもらえることこそが最大の報酬である。それなのに、この仕打ち。善意を仇で返された気分だ。

そもそも僕が「よその子」の紹介を始めたのは、純粋にフリーゲーム界隈の賑わいに花を添えたいという思いがあったからである。だから、心から好きなゲームばかりでなく、あえてライバルとみなしている作品も紹介した。そして「よその子」を紹介する以上、そちらの評判を聞くのは予想がついていた。しかし、現実は僕の予想の斜め上を行った。まさかここまで「うちの子」の存在を黙殺されるようになるとは思いもしなかった。

なぜこうなったのか、僕なりに分析する。プレイヤーは、作者自身よりも、同好の志とつながりたいのだろう。作者に直接言いづらいことでも、ファン同士なら言いやすい、というわけだ。結果、作者は直接評価を聞かず、僕の耳に入るのは僕がレビューした作品、つまり僕がファンと思われている作品の話題ばかりになるんだろう。

でも、やはり腑に落ちない。「うちの子」の話題をしてもらえず、「よその子」の話題ばかりされて喜ぶ親(=作者)って、そんなにいるものなのか。だが、同人作品とそのレビューの世界はそういう「配慮」をプレイヤーに求めることはかなわない世界なのだ、と悟った。

ここまでのまとめ

  • 同人作者が自分の創作のジャンルのレビューサイトを開設すると、大抵「他所の子」ばかりが褒められ「うちの子」は見向きもされない。「うちの子」の話をしてもらえるの2割、残りはよその子、ライバル視している作品の話題である。
  • 自分と同列か格下だと思っている同人作品をあなたのサイトで紹介すると、あなた自身の作品より数倍反響が来る。
  • 他の同人レビューサイトの運営者があなたを同業者とみなして連絡を取って来るが、見に行くと「うちの子」の紹介はなく「よその子」ばかりが絶賛されていることが8割である。
  • あなたの「よその子」レビューを見てあなたに連絡をしてくる人の8割はあなたの作品をプレーしていない。あなたが創作をしていること知らない人さえかなりの割合いる。
  • 「よその子」を貴方に対してべた褒めしてくる人が「うちの子」を黙殺するのに耐えられない人は、レビューのページは作らない方がいい。

対策

ならどうするか。

自分のサイトではなく、投稿型のサイトに、いちレビュワーとして投稿するのが無難である。書籍におけるアマゾンや読書メーターのようなサイトがフリーゲームにもある。ふりーむや、会員登録など若干敷居は高いがベクターがそれだ。こういうサイトにレビューを書き、サイトから自分のレビュワーページにリンクを張るだけにしておく。こうすることでフリーゲームへの貢献度は損なうことなく、純粋にその作品へのひとつのレビューとして、溶け込むことが出来るのだ。現に僕も、フリーソフト超激辛ゲームレビューに投稿する形になってから、上記の「よその子絶賛、うちの子無視」の連絡はこなくなった。

あるいはライバル作品など最初からレビューしないことだ。褒められると自分も嬉しくなる作品だけレビューすることだ。もちろん、これは消極的な解決策であり、ライバル作品も紹介した方が、その界隈全体の繁栄に繋がるのは間違いないが、それは相当歯がゆい思いをする覚悟が必要なリスキーなことなのである。大変残念な現実である。

おわりに

フリーゲームは作者とプレイヤーの距離が近く、それらの境界線が曖昧の文化だった。ゆえに、プレイヤーが作者となり作品を公開したり、僕のように作者がプレイヤーとして多くの作品を発掘したり、そういう動きが盛んであった。しかし、それが「よその子」の話ばかり聞かされるという状況を生んでしまった。これは同人特有の問題かもしれない。

僕は自分の作品にそれなりの自負があるものの、あまり自己主張するのは卑しい、もっと謙虚に、という姿勢で来たが、それがこのざまである。卑しくとももっと「自分は○○作者です」ということを、アピールして行くのがこの世界で生き残るための、そして歯がゆい思いをしないための知恵なのかもしれないと今では思っている。

余談

上記の10年以上も前の話をするきっかけになったのは、最近もらったメールである。古いフリーゲームが忘れ去られているのを残念に思い、今もレビューが残っているうちのサイトを評価してくれるものだったが、内容はまさに「よその子絶賛、うちの子無視」だった。やはり何らかの形にしておかないと、と思い、したためた次第である。

皆さんにとって、何らかのご参考になれば幸いである。