神無月サスケの波瀾万丈な日常

神無月サスケのツイッター(@ktakaki00)を補完する長文を書きます。

死にたいときのための漫画紹介・その5(最終回)

その4(d:id:ktakaki:20081112)では水木しげるを取り上げて、マイペースで行くことの大切さを訴えた……ような気がする。確証が持てないのは、論理的な文章と違って、感性的な要素(一般の言葉で右脳ってやつか)を働かせて書いているので、理論的に筋が通っているかどうかは分からないし、どんなメッセージを受け取るかは、原則読み手に任せているからである。

そういうわけであるが、水木しげるの自伝は本当にお薦めである。唯一難点があるとすれば、時代背景が違いすぎるため、ピンとこなかったり、21世紀を生きる我々には直接の形では教訓が活かせない部分があることだろう。

そこで、現代の我々にダイレクトにピンと来るものってなんだろうか……そう考えたときにお薦めの漫画をいくつか紹介。

失踪日記 by 吾妻ひでお

まずは、2005年に出て以来、かなり話題になっているこの本から。

失踪日記

失踪日記

80年代に「ななこSOS」や「不条理日記」などでコアなファンを得た漫画家、吾妻ひでお。しかし描けなくなり、失踪してしまう。その後、一旦自宅に戻るも再び失踪。その後アル中に。その壮絶な人生を赤裸々につづっている。本の帯に「全部実話です」と書かれているが、つとめて重苦しくならないようにしているという。

なお、この漫画に描かれたついては、他にもいろんな本でインタビューを受けるなどで周辺が明かされている。一部Wikipediaに詳しいので、こちらも参考にしてほしい。

wikipedia:失踪日記

逃げてもいい……いや、やっぱりだめだ!

漫画ではつとめて重苦しくなりすぎないようにしているというが、やはりそれを見ても、壮絶さは感じる。

特に、失踪中、ホームレス生活を続ける様子の描写や、アル中で精神病棟に入院するまでの生活など。

一見すると「ただ壮絶」で済むかもしれないが、この漫画の中では、周囲にかけた迷惑が全然描写されていない。

別の本で「自分が大変だった」ことを漫画に描いたら「こっちはもっと大変でした」と奥さんがそっと追記していたとか。

まあ、そのあたりをさらりと受け流してしまうようなところも、ある種の強さといえるのだろうが。

でもやっぱり、逃げたい願望ってあるよね

この漫画が人気になった理由って、やっぱり誰にも逃げたい、あるいはここではないどこかに行きたいって願望があるからだと思う。これを買った2005年、僕は今ほど思いつめてはいなかったのに、それでもこの漫画に惹かれてしまったのは、やはり潜在意識のどこかに、そういう思いがあったからなんだと思うし。


失踪といえば、こんな本が昔あった。

完全失踪マニュアル

完全失踪マニュアル

言ってみれば「完全自殺マニュアル」の二番煎じなんだけれど、妙に人気があった気がする。僕も高校か大学の時代に購入して、妙に共感したのを覚えている。でも僕の場合、失踪は出来ない。でも、放浪したくなる。この本、うまい放浪の仕方の参考にもなるし。

吾妻ひでおの「失踪日記」も、いざとなって逃げてしまっても、自殺なんかしなくても、まあなんとか生きていけるっていう、ある種の安堵感を与えてはくれると思う。

やっぱり失踪に思いを馳せて適度にストレス発散しよう

失踪ともうひとつ、この本の主題になっているのが、アル中。実は僕、こちらの方が身につまされている。

僕は結構お酒を飲む。彼ほどではなく、週2回か3回、きつい仕事の後に飲むだけなのだが、多忙な時期になると、結構酒の量が増える。

別にその程度ならいいと誰もが思うだろう。しかし吾妻ひでおも、そんな状態から徐々に酒の量が増えて、いつの間にかアル中になっていたようである。アル中は誰もがなりうるのだ。その恐ろしさが感じられる。

やはり現代社会はストレスがたまる。無理に我慢していると、依存してアル中になったりするんだろう。

現代に生きる我々は、ストレスをためないように工夫する必要がある。適度に失踪への思いを馳せるのが一番……なのかもしれない。


番外編:カラスヤサトシ

もうひとつ漫画を紹介します。

カラスヤサトシ (アフタヌーンKC)

カラスヤサトシ (アフタヌーンKC)

アフタヌーンに掲載された、お題を与えられて描く4コマ。作者、カラスヤサトシの実生活や子供時代の思い出、趣味などを描いた漫画です。

正直この方、ダメすぎです。でも憎めません。僕は彼のことを「ユルさとダメさ、そして少しのいい人っぽさ」と形容するのですが、その「少しのいい人っぽさ」などがあるからです。

この人、いい歳してキン消しなどの子供が好きそうな趣味を持っており、巻を追うごとに(現在3巻まで出ている)そのダメさが加速していくのだが、こんな調子でもまあ、何とかなるのだなということに気づかせてくれます。

とにかく、一言では説明しにくい魅力がある。

疲れたときにだらだらと読むと面白いのですが、死にたいときに読むと、逆に憂鬱さが加速するかもしれませんので、番外編扱いとさせていただきますが、この人の天然記念物っぷりは、特筆に価しますので、興味をもたれた方は、ぜひ。

というわけで

大体「死にたいときのための漫画紹介」ネタも出尽くしたところです。読み返してみて、つくづく自分はマイナーな漫画ばかり読んでいると改めて実感しました。

死にたくなったとき、心の支えになるのは、意外に些細なことだったりします。以前観た映画の言葉だったり、ある人が自分に昔かけてくれた、何気ない一言だったり。今回紹介した漫画は、どちらかというとイロモノ系ばかりですが、死にたいときに心の支えになる、そんな要素のひとつになれば幸いです。