皆さんはRPGツクール for Mobile、既に試されたことでしょう。
Dante98時代のような、制限された環境のなかで、いかに面白いものを作るか。そういった楽しさを改めて感じさせてくれるツクールです。
しかし、独特の制約があり、落とし穴があるため、後で気がつく人も多いようです。実を言うと僕も、ヘルプをよく読まずに組み、後で気がつくという失態をしでかしていました。そこで、僕が『ぼくのすむまち』を作っていて「落とし穴になりそうだな」と思ったところをリストアップしていきます。制作を考えている人、既に始められた方は参考にして下さい。
『ツクールWeb』のFAQと重複する部分もありますが、ご愛嬌。
見落としがちな落とし穴
- 『仲間の入れ替え』で一旦仲間をはずすと、そのメンバーのパラメータは初期値に戻る
- レベルアップのあるゲームを作られる方は、要注意!『透明の主人公を作り、仲間を入れ替えることによって画面から主人公を消す』といった演出は、昔のツクール時代からよく使われてきた手法ですが、これをやるとはまります。僕も後で気がついて、イベントを全て作り直しました。ツクールWebのFAQのトップに出ている項目であることからも、特に注意が必要だということが分かります。なお、能力値のみならず、なんと持ち物まで初期化されてしまうのです。ここもかなり注意が必要です。
- 1ユニットに置ける敵グループは10まで
- ランダムエンカウントで多くの種類のモンスターグループを配置しようと考えている人は要注意!あらかじめユニットを分けておかないとはまります。さらに悪いことに、マップを別ユニットにコピー&ペーストするとき、イベントはコピーされないため、移動イベントを全て組みなおすはめになります(ええ、僕はなりましたとも(涙))。
素材の仕様
- 戦闘時の音楽は1種類のみ、戦闘終了の音楽は固定
- 戦闘の曲はボスでも同じ局を使う必要があります。このため、選曲はよく考える必要があります。また、戦闘終了の曲は固定のようです。
- キャラの素材は16x32
- 今回は全体的に『RPGツクール2000/2003』の素材を流用しやすい仕様になっているようです。RTP素材の流用も、ユーザー登録をしている人なら可能です(と聞いています)ので、変換して使用してもいいでしょう。フリー素材も規約を確認のうえで使用できそうです。しかし、キャラの歩行グラフィックだけは注意が必要です。ツクール2000系素材は、キャラのサイズが24x32のため、左右4ドットにはみ出した分は削る必要があります。
イベントの仕様
- 自動実行は並列実行されない
- 複数の自動実行イベントの条件が満たされても、実行されるのは一番左上にあるイベントだけのようです。(注:これは開発中バージョンで試したものであるため、リリース版では挙動が変更されているかもしれません)また、ツクール2000のように実行中に別のイベントが割り込むと言う事はなく、必ずページの最後まで実行され、その後別の自動実行イベントがあれば、そこに処理が移る、という形になります。
- スイッチの反映はイベントの該当ページの実行が終わってから
- 例えばRPGツクール2000では、宝箱を開けるイベントを作る場合、スイッチを変えると即座に新しいページのグラフィックに変わっていましたが、ツクールforMobileでは違うようです。よってグラフィックを変える場所で一旦スイッチをONにしてそのページを終わらせ、自動実行で別のページに移るなど、別の組み方を考えましょう。
- イベントが表示されるのは、移動イベントを含むページの実行が済んでから
- 移動イベントの後、ページにイベントがずっと続いていると、そのページの内容が終了するまでイベントは表示されません。移動後もイベントを続けたい場合、スイッチをONにしてそのページをおわらせ、そのスイッチで自動実行イベントを起動する方がいいでしょう。
イベントコマンドの仕様
- 『蘇生コマンド』はない
- 死んだメンバーを生き返らせるには、蘇生アイテムか魔法、あるいは教会か宿屋をプレイヤーが能動的に行わなければなりません。このため、『ボス戦の後死んだ仲間を自動的に蘇生』といったことや『死者復活の泉』といったイベントは作成できません。なお、全滅後も戦闘が続く場合は、全員のHPが1になって復活します。
- テレポートを行うと、そのマップ内に船と飛行船も移動する
- テレポートはワールドマップ内での使用を想定しているため、このような仕様になっている。なお、船と飛行船を移動させるのは、テレポートによる移動のみのようです。船や飛行船をお考えの方は、テレポート位置には気をつけましょう。
- アイテム入手の際には『アイテム空き条件分岐』を忘れずに
- 今回、持てるアイテムの数が一人8個までという制限があります。このため、持ち物が一杯になることも少なくなく、プレイヤーはアイテムの取捨選択に悩むことが多いわけです。この仕様は、ファミコン時代のRPGプレイヤーなら懐かしく感じることでしょう。さて、『アイテムの増減』コマンドでアイテムを手に入れる際に、もし持ち物が一杯の場合、何もおきません。すなわち手に入れたはずのアイテムを手に入れられないというわけで、イベントアイテムの場合、先に進めなくなる可能性すらあります。このため、アイテムを増やす際には『アイテム空き条件分岐』を行い、持ち物が一杯かどうか確認する必要があります。
戦闘の仕様
- 会心ダメージは『防御力を半分にして計算』
- 防御力の低い敵に対しては、会心でも通常でも、あまりダメージが変わらないことになります。会心の一撃による効果を有効に使った戦闘バランスにしたい人は、防御力が高めになるように設定しましょう。さすけの経験則では、防御力を攻撃力の1.4〜1.9倍あたりに設定するのが丁度良くなるようです。
- 状態変化技能は「All or Nothing」
- 例えば『敵を眠らせる』『全体に効く』で成功確率80%にする場合を考えましょう。この場合、80%で成功し全体を眠らせます(その技能が『無効』に設定された敵には効かない)。残りの20%は「技能は失敗した」と出、1体にも効きません。若干、癖がありますね。さすけも一旦は「どうしようか」と悩んだのですが、ためしに実験してみると、これがなかなか面白い。とはいえ、癖があることをきちんと意識してバランス調整を行う必要があるのは確かです。
- 状態変化技能の成功確率は固定
- 敵によって成功確率を変える、ということは出来ません。「1倍」「1.5倍」「半減」などの効果があるのは、ダメージ魔法の威力だけで、技能の成功確率には影響しないのです。唯一有効な指定は「無効」。これにすると、一切その技能は効果がなくなります。……このように、状態変化技能は、結構癖があるのです。眠りや麻痺を入れたい人は、事前によく実験してみてくださいね。
- 防具の回避率のことがヘルプに無いが……
- モンスターの攻撃の際、攻撃ミス確率に加算されるようです。すなわち、以下のようになります。
モンスターの通常攻撃の命中率=100−(攻撃ミス確率+攻撃を受ける側の防具の回避率合計)
アイテム、技能の仕様
- 『敵の出現率低下』はマップ内のみ
- 127歩までエンカウント率が5分の1になりますが、マップが切り替わると効果がなくなります。効果がなくなっても「効果がなくなった」などの明示的なメッセージは出ません。また、いわゆるダンジョン内部でも有効なので、これを採用するかどうか考えたほうがいいでしょう。
- アイテムの効果『スキルの効果増加/減少』について
- ヘルプの説明は若干紛らわしいが、効果があるのは、そのアイテムの利用者の使うスキルのみ。よって、『スキルの効果減少』については、マイナスの効果しかないため、有効活用には、工夫が必要でしょう。
- 素早さを上下させる技能は、防御力にも影響を与える
- 技能で上下できるパラメータは「力」と「素早さ」のみです。このうち素早さを変更させると、それに連動して防御も該当する分だけ上下するようです。(注:僕が個人で調べた範囲であり、詳しい仕様は未確認です)
有効利用したい仕様
ここまでは注意点だったので、この章ではコツを。『RPGツクールforモバイル』には、戦闘に関する多くの魅力的な仕様が用意されています。戦闘は、他のイベントに比べて(敵のグラフィックを除けば)容量の消費が少ないまま作りこめるため、凝った戦闘を目指すのは正しい方向のひとつといえます。
- 敵の「グループ」指定が可能に
- これまでの多くのツクールでは「敵1体」と「敵全体」のみで「敵グループ」という範囲の指定がありませんでした。今回、この「グループ」が導入されました。配置可能な敵の数がたかだか5体であるため、他のゲームほどにはいかないでしょうが、グループ技と全体技を使い分けられる局面を用意しておくと戦略性が増します。
- 『敵味方全体』が範囲の技
- 今回、効果範囲が『味方』のダメージ技能や、『敵味方全体』が効果の技能が作れます。戦闘のセンスが試されるといっていいでしょう。拙作「ぼくのすむまち」の第2話以降でも、これを使った技を登場させてみましたが、いやはや、戦略に深みが増します。興味のある方はプレーして確かめてください。(余談ですが2話は5月22日リリース予定です)
- 比率による指定
- 技能や攻撃力上下の数値は、固定数値の他に、比率が選べます。比率は、能力値変化に最適な指定でしょうが、敵の攻撃のダメージに指定すると、面白い攻撃が出来ます。余談ですが、敵専用の「炎を吐く」は、この比率ダメージ(最大HPの30%)に通じるものがあります。
- HP消費技
- これは多くの人が欲しかったものではないでしょうか。体術を導入したい人には朗報といえます。HPを消費して仲間のHPを回復する技を作るのもいいでしょう。追記06/05/27:HPを消費してHPを回復する技にはバグがあり、所定のHPが消費されません。デフォルトでも『祈り』という技がありますが、正常に動作しません。この不具合はエンターブレインに報告済みですが、皆さんも導入の際にはチェックしてください。
- 装備に技能や道具の効果が付けられる
- 個人的にはこれが一番うれしい仕様です。道具が8個までしか持てないことと相まって、有効活用が求められるでしょう。なお、技能効果のある道具や装備は、術が封じられていても使えますし、MPも消費しません(さらに言うと、術が一旦封じられたら、アイテムなどで回復する方法は無く、戦闘終了か自然治癒を待つしかない)。このあたりを考慮して戦闘を作成するのもコツですよ。
追記06/05/15 続・戦闘の仕様について
- 『スキル封じ』は自然治癒しない
- 上で「術が封じられたら戦闘終了か自然治癒を待つしかない」と書きましたが、実際に試した限りでは、ヘルプの説明とは違い、戦闘中の自然治癒はないようです。すなわち戦闘中に術が封じられたら、回復手段はないとみていいでしょう(死亡→復活という方法はありますが)。より一層、アイテム効果の技が重宝しそうです。
- 技能の使用に関して、敵は賢くない
- 一般的なRPGでは、敵によって賢い敵はMPがなくなると通常攻撃に切り替えますが、そうでない敵は術が封じられようとMP不足になろうと、使えない技を使い続けます。ツクールforMobileの敵は全て後者です。『スキルが封じられると回復手段がない』ことも相まって、うまく設計しないと敵が間抜けになります。「炎を吐く」などを上手く使ったり、ボス級の敵の場合スキル封じを無効にするなど工夫が必要です。
- 『防御』では炎や技のダメージは半減しない
- ヘルプにも書いてありますが、見落としがちです。ただでさえ使いどころが少ない『防御』ですが、本ツクールでは、より一層立場が薄そうです。余談ですが、敵の『毒攻撃』は通常攻撃とみなしてダメージが半減されます。
- 『麻痺』で体が動かなくなるのは3回に約1回
- ヘルプにも説明が無いので試してみましたが、大体3回に1回くらい「体がしびれて動けない」となりました。逆に言うと3回中2回は動けるわけで、昔のドラクエのように「全員麻痺したらゲームオーバー」という風にはならないので安心といえます。敵に使う場合は、かなり使い勝手が良いと思えます。特に、強力な攻撃をしてくる敵が麻痺が効くようなケースなどを考えると、『麻痺』は使いようによっては戦略性を高くするように思えます。
参考リンク
『RPGツクールシステム研究室』さんの容量に関しての考察。
http://suppy1632.hp.infoseek.co.jp/mobile/m001.html
素材やメッセージを多く使いたい方は参考になると思います。
大体こんなところでしょうか。参考になれば幸いです。思いつき次第追加するかもしれません。
追記 06/05/08 21:33
あのヒデさんのブログで紹介していただきました!5月2日に紹介していただいたのですが、遅ればせながらこちらでも紹介。
http://alphanuts.paslog.jp/article/318795.html
嬉しいのでトラックバックしちゃいます。